日本語教師は養成講座をどのように選んだか

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日本生活文化研究の校外授業 京都伏見


 私は日本語教師養成講座に通学した経験はありません。若いときには、そんなものはこの世にまだ存在しませんでした。私は、文学部国文学科出身です。大学では中古文学を専攻しました。大学院でもそのまま源氏物語研究を続けました。

 大学院修了後就職先に困り、新聞の求人欄をみて応募し、専門学校の日本語関連科目の講師に採用されました。日本語教師養成コースと書いてありました。国文科出身なので国文法の基礎知識があるので文字表記とか文法の授業を担当しました。生徒から先生は日本語教育能力検定を受けたことがあるのかと言われそんな試験があるのかと調べて次年度受験しました。おそらくそのころ日本語教師養成講座はあったかもしれませんが、大学院を終わってまだ学校にいくなんて思いもしなかったのです。

 生徒からは、先生は外国人に日本語を教えたことがあるのかと聞かれることもありました。「ないです」とは言えず夜間の会話クラスのアルバイトに応募しました。会話クラスは週に2回90分の3ヶ月という短期講座でした。欧米人が多かったです。ものすごいからだの大きな真っ黒の肌の目つきの鋭い男性のことは忘れられません。その人はペンでメモをするとき、まず太ももの横のポケットに手をやりカチッとならすのです。そのたびに銃で撃たれる妄想をしていて、びくっとしたりもう倒れそうでした。もっと英語が堪能なら説明できたのにごめんなさいと思いつつ90分間必死に授業をしました。毎回宿題を出して回収し返却します。せめてもの罪滅ぼしに丁寧に添削しました。

 日本人の専門学校の学生たちは20歳にも満たないのに、これを仕事にしたいとなぜ思うのだろうかと不思議でたまりませんでした。大学受験に失敗し専門学校に進学した学生たちには、国文法の方向からの小難しい話よりも、外国人目線の日本語の間違いや面白いエピソードのほうが好まれることに気づきませんでした。次年度から別の専門学校に移りました。検定にも合格しているし経験も多少あるので今度は自信をもって試験や面接に臨みました。試験は文法のシラバスを書くということでした。どんな順番に教えれば彼らはもっと満足したのかと振り返り考えました。面接ではこんなシラバスの書ける先生に来てもらいたかったといわれました。その後ら抜き言葉について説明してくださいという模擬授業があり精一杯丁寧に説明し採用されました。その後日本語の場合は時給が安いといわれたので、私は大学、大学院、検定試験合格と十分に時間とお金をかけてここまできたのでほかの語学と差別されるなら引き受けられませんと言いました。それで時給は見直されました。その後社会人教育の日本語教師養成講座でもアルバイト講師をしました。新規開講の日本語教師養成講座があり今までの経験から実習もできるをうたい文句に立ち上げからかかわりました。

 私にとって日本語教師養成講座は未知のものであったのが、いつしか教える場になっていました。